シリウス、ドゴン族、ノンモ、仏陀、ゾロアスター、マニ、シヴァ、イエス、エリヤ、モハメット、アポロ、ピタゴラス、ロゴス、ナグ・ハマディ文書、グノーシス、イクンアトン、マーヤー、シータ波、右脳、チャクラ、死者の書、第三の目、フィボナッチ定数。
こういった単語がどんどん出てくる本はスピ系だと思いませんか?
これはフィリップ・K・ディックの「ヴァリス」に出てくる単語です。
一応SFとなってますが、私から言わせたらもはやSFではなかったです。
彼の神秘体験を元に書かれたものですが、同じ体験を元にした「アルベマス」はまだ、楽しめる作品でした。すでに映画化されてる(未公開)だけあります。
また、今まで読んだり紹介したディックの作品はSFとして面白いものでした。
でも、これは違います。
私がもし、全くスピ系の本を読んだことがない時に、ディックの作品としてこれを最初に読んだとしたら、すぐに放り投げて、以後ディックの本は読まなかったでしょう。
これは神学、哲学を含むスピリチュアルな内容を狂人の体験として書いたものだからです。SFの要素はほんの少しです。
今だからこそ読めた、理解できた本ですね。
この本の主人公はフィリップ自身とその分裂した人格ホースラヴァー・ファットなんですが、
実はフィリップはギリシャ語ではホースラヴァーという馬を愛するものを意味するそうです。
ファットはドイツ語のディック。
つまり、自分自身の別名なのです。
ここで驚いたのが、「馬を愛する者」
私は馬と縁があると複数の人に言われたことがありますが、実際に馬に乗ったこともなく、別に馬好きではありません。
でも、妻も午年で、学生時代付き合った彼女も午年でした。
おまけにケンタウルス出身と言われてます。ケンタウルスは半人半馬です。
先日、ディックのSFによく出てくるプロキシマがケンタウス座の恒星だと知ったばかりですが、ディックの名前にまで馬が出てくるとは思いもしませんでした。
私が彼の本を好きになるわけです。
聖霊に満たされると、全く頭にないことを勝手に口が動いて話すことがあると言われていますが、
「アルベマス」にもそういう話がありました。
本作にも出てきますが、内容は違うものでした。
でも、著者が同様の体験をしてるのは明らかです。
ここで、本文の真理をついた記述を紹介します。最近私が確信し始めた内容でしたのでビックリしました。
こちらです。
わたしはいった。「きみは昔はトマスだったということか。きみはトマスの生まれ変わりで、その記憶が・・・・・・」
「いや、トマスは今生きてるんだ。古代ローマに今生きてるんだよ。それにトマスはぼくじゃない。生まれ変わりなんかじゃないんだ」
「しかし、君の体はどうなっているんだ」
ファットがわたしを見つめて、うなずいた。
「そうだよ。つまりぼくの体はふたつの時空連続体の両方に同時に存在してるか、どこにも存在してないのさ」
(ファットの受けた啓示14)
宇宙は情報であり、われわれはそのなかに静止しているのであって、三次元内にも空間内にも時間内にも存在しない。われわれは送り込まれる情報を現象界に実在化する。
(同30)
現象界は存在しない。現象界とは<精神>の処理する情報が実在化されたものである。
「われわれはここで迷宮のなかににいる」ミニがいった。「われわれがつくり、落ち込み、そして逃げ出すことのできない迷宮に。
(中略)
われわれは偉大な建築家だったが、ある日、遊びをすることにした。自発的にやったのだ。脱出口があるものの、迷宮──この世界──が生きているため、たえず変化しつづけるので、実際にはわれわれにとって脱出口のない、そんな迷宮をつくれるほど、われわれは完璧な建築家だろうかと思ったのだ。
この遊びを現実的なものにするため、知的パズル以上のものにするため、われわれは異常な能力を失い、われわれの力をあらゆる面で減ずることにした。
不幸なことに、これには記憶の喪失も含まれていた(あと省略)」
「そうすると、ぼくたちを迷宮から脱出させるのは第三の目というわけですか」ファットがいった。「それでエジプトやインドでは、第三の目が神のような力や悟りと同一視されてるんですね」
「どちらもおなじものだよ」ミニがいった。「神のような力も悟りも」
「本当ですか」わたしはいった。
「本当だとも。それが本来の人間だ。人間の真の状態だ」
「迷宮から脱けだしたら、何が起こるんです」ケヴィンがいった。
「われわれは時間と空間から解放される」
てな感じで、この世界の真実を非常にうまく説明してる部分があります。もっと難解に書かれてる部分もありますが。
他のディックの本のように誰にでもお勧めできるものではないですが、精神病や哲学、神学、難解なスピリチュアルな探求が好きな方にはいいんじゃないかと思います。
ただ、そういう知識のない方のために、巻末に70ページほど使って用語についての説明が載ってます。
だから、根性がある方なら、それらに目を通しながら読むこともできるでしょう。
また、ディックが受けた啓示集も52項目載ってます。
これはまさにスピリチュアルな啓示です。本文に出てた14と30を紹介しましたが、真実だと思います。
他にも興味深い話がたくさんありました。
「ヴァリス」がSFとして面白い、と言えるかは微妙ですが、オペラになったりしてるみたいです。
ちなみに、「ヴァリス」は三部作の最初の作品と言われていまして、次が「聖なる侵入」という作品で、ここまでは一応SFとなってますが、最期の「ティモシー・アーチャーの転生」はノンSFとなっています。
とりあえず、「聖なる侵入」を予約しました。三部作となれば全部読まないとね。
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ヴァリス
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