これはSF娯楽作品ではありますが、実は深い真実の世界を垣間見せてくれる名作でした。解説ではこれに対して「ドタバタ喜劇」という見方をしていましたが、何もわかっていないと思います。
もちろん私もスピリチュアルな世界を学んでいなければ、その意見に同意したかもしれませんが。
ディックはこの時はまだ神秘体験はしていなかったはずですが、潜在的にわかっていたようです。
この現実世界が幻だということを。
そして、人それぞれ同じ世界にいるように見えて、みんな違う解釈で違う現実を生きているということを。
そして、我々は夢の世界を現実だと思い込んでいるんだということを。
あと、臨死体験で15分しか経っていなかった間に別世界で1万年過ごした中山さんのように、時間というものは固定されたものじゃない、ということや、
我々は同時に二つの世界で存在できる多次元的存在だということもさらっと描かれています。
もちろん、SFですから、そんな説教めいた話は全く出てきませんが。
次に何が起こるのか、この悪夢はいつ終わるのか、主人公は危機を乗り越えられるのか、と楽しみながら読むことができます。
そういった意味では死後刊行された「ティモシー・アーチャーの転生」などとは正反対の小説ですから、同じ長編でもこちらはお勧めできます。
他にもアメリカで昔起こったアカ狩りについての風刺的な話も入っているので、実は現実的な要素もあります。
ちなみに、「虚空の目」は出版社がつけたものだそうです。まだ4作目で自分の思い通りにはいかない時代だったんでしょう。
小説自体は事故に遭った時に起きた出来事を熱かったものですが、夢の話に近いものです。
主人公は次第にこれが現実ではないと気づいていきます。
夢の中で夢だと気づける夢を明晰夢と言いますが、私はなかなか気づけません。
先日もマグロのように大きなサバが出てきましたが、なんの疑問もなく受け入れていましたからね。
荒唐無稽な夢さえ夢だとわからないのに、この現実世界もまた夢だと認識できるわけがないですが、覚めてみたらようやくわかるんでしょうね。
それが覚醒ということだと思います。
生きながらにして目覚めたいものですね。
P.S 図書館の本が延滞しているので、あと一冊読んだら講演会報告にかかります。もうしばらくお待ちください。
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虚空の目
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